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starnet -recode- にて 2025冬| 生井亮司さん「静寂と光、そして祈ること」 [1]

  • erico tsumori
  • 11月23日
  • 読了時間: 4分

更新日:4 日前



栃木県益子町にstarnetという場所があります。


約30年前、東京を離れ、益子に移り住んだ馬場浩史さんが、日々の暮らしと縁を重ねて創られてきた場所です。2012年に馬場さんが、その数年後に奥さまの和子さんがご逝去された後も、馬場さんの傍にいらした方々と、遠く近くより存続を望む人の手をわたり、今も場は継がれています。


starnetが生まれた1998年、私は十代後半で、ひとつの節目を迎えていました。節目は想像以上にながらく続き、節目というより、十年続くひとつの章であったと思います。先ゆきの分からない道半ば、ご縁のある方々から「ぜひここに行ってみて。馬場さんという人に会ってみて。」と、人生の先輩方がメッセージをくれました。二十代後半のことでした。


当時の私は、思い立って出掛けられる身ではなく、情報が極力抑えられた、真っ白に近いstarnetのWebサイトを時折り訪ね、そこにあろう場と、そこに暮らして生きるひとびとを想っていました。姿は見えないままに、存在は私にとって確かな '支え' でした。


さらに幾年もの年月を経て、新たな節目を迎える頃、starnetの方からお声がけをいただきました。


社会生活に復帰して、自分なりの暮らしをはじめ、かつて通った大手町のオフィスに再びお世話になって、五年が経った頃でした。突然のお声がけに戸惑いながら、「はじめまして」を交わした女性は、私の穴の空いた奇妙な履歴書をものともせずに私を迎えてくれました。そうして東京・馬喰町にあった starnet tokyo を、閉店(2019)を迎えるまでの数年間お預かりすることになりました。過去、ぽつりぽつりと生まれた縁が、ひと束になるような出来事でもありました。


その時既に、馬場浩史さんは天へ召されていましたが、かつて姿の見えなかった場に実際に身を置いて、魔法のようで魔法でない数々のシーンに遭遇し、日々のうつくしさをあらためて教えていただきました。



亡き人の場を受け継いでいく。

同じ方向を望んでいても、アプローチはさまざまで、時に言葉は意味を成さない。日々のうつくしさは、ただふんわりと優しいものではないけれど、そのかなしみを含めて、いとおしい。


時を経て、世代交代していく starnet と、あらためてご縁をいただいています。

何をしているのか、どうしてか、いつまでかもわからない。それでもこうして時を跨いでめぐりめぐるのですから、織りあう縁は、何周も回ってやっぱり、うつくしい。






2025年11月22日〜12月7日、彫刻家 生井亮司さんの作品を益子starnetの丘の上のrecodeでご覧いただけます。


先月、展示を控えた生井さんから制作途中の少年を写した写真をお送りいただきました。 アトリエで撮られた一枚でした。


 

生井亮司
制作風景(2025.10) 撮影:生井亮司

 


 


しばらく言葉をなくしていたあいだ、深い海のようでした。 


少年を前にして躊躇わずに感じることのできたその海は、

しんとして、まろやかでした。
 


意味もつ前のことばの波を、すべての存在は宿していると思います。



湧いてはようすを変えて砕けゆく波


波々の源は、何処だろう


何処へ、かへってゆくだろう


 


 あなたはそこにいるんだねぇ


 わたしも、いるねぇ

 


 ほんとうだねぇ


 


かなしみはしんとあたたかく

思いのほか逞しく

再生のいぶきを宿している。


濁りようのない いぶきのひかり



私は薄明るい冬の 'recode' がとても好きです。

すこーん と響く広さにゆだねて静かに籠ってゆけるのは

雪国に由来する場のお陰さまもあるのでしょうか。



12月6日(土)の午後、会場でお話会が開かれます。

生井さんと永きにわたり、ゆっくりことばを交わされてきた 西平直(にしひらただし)さんが、はるばる京都よりお越しくださいます。


ぜひ、ご来場ください。

 


⚫︎

 


「静寂と光、そして祈ること」—— 生井亮司


 


starnet -recode-

2025.11.22-12.7 


開廊日:金・土・日・祝のみ

11:00-17:00(最終日15:00まで)


作家在廊 11/21.22.28.29.30・12/5.6.7 



[ お話会 ]

12/6(土)14:00-15:00

西平 直 × 生井亮司(ご予約不要・無料)


 

starnet|栃木 益子




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